手足口病、ヘルパンギーナはいずれもエンテロウイルスによる感染症です。
夏風邪として代表的な疾患で、初夏から秋にかけて流行します。
2024年7月現在、手足口病が例年にない大流行となっています。
手足口病、ヘルパンギーナは発熱と発疹を特徴とする疾患です。
口の中だけに水疱や口内炎がみられるのがヘルパンギーナ、手や足にも発疹がみられれば手足口病です。
今回は、手足口病とヘルパンギーナについて解説します。
手足口病、ヘルパンギーナの概要
手足口病およびヘルパンギーナは、エンテロウイルスによる感染症です。
4歳以下の乳幼児に多く、初夏から秋にかけて流行します。
2024年の初夏から夏にかけて、手足口病が大流行し各地でニュースになっています。
エンテロウイルスとは
エンテロとは「腸」という意味です。エンテロウイルスは主に腸管で増幅するウイルスのため、この名前がつけられています。感染症法では、5類感染症に分類されています。
エンテロウイルスには、いくつかのウイルスが含まれます。
手足口病、ヘルパンギーナの原因となるウイルスは?
手足口病の原因となるのは主にコクサッキーウイルスA16型とエンテロウイルス71型です。
ヘルパンギーナの原因となるのは、コクサッキーウイルスA4、A6、A10型、コクサッキーウイルスB型、エコーウイルスなど多岐にわたります(1)。
エンテロウイルスの感染経路、潜伏期、ウイルス排泄期間は?
エンテロウイルスは、飛沫感染、糞口感染、接触感染の3つの経路で感染します。
・飛沫感染…唾液などに含まれたウイルスが、咳などの際に微細な飛沫となって拡散し、周囲の人の目、鼻、口の粘膜から感染します。(例:感染した子供が咳やくしゃみをする際に、近くにいる他の子供や大人が飛沫を吸い込む)
・糞口感染(経口感染)…便に排泄されたウイルスが他の人の手につき、それが目や口の粘膜を介して感染します。(例:オムツ替えの際に保護者の手にウイルスが付着し、その手でドアノブなどを触ることで他の人に感染する)
・接触感染…手足口病で、水疱が割れてでてきた液体が周囲につくことで感染します。
エンテロウイルスの潜伏期間は3-6日間です。
ウイルスの排泄期間については、のどからと糞便からで異なります。
のどからウイルスが排泄される期間は約1週間ですが、糞便からウイルスが排泄される期間は6-8週間と長期に持続します(1)。
再感染するの?大人にも感染するの?
エンテロウイルスは、型ごとに終生免疫を獲得します。
ただし、一度感染しても他の型による感染症にはかかるので、再感染することは起こりえます。
不顕性感染も起こることから、年齢があがるにしたがって抗体の保有率が上昇します。つまり、大人になるほどかかりにくくなります。
しかしながら、稀な型のウイルスが流行した際には、大人でも感染することがあります。
手足口病、ヘルパンギーナの症状
手足口病、ヘルパンギーナの症状の大きな違いは、手足に発疹が出るかどうかです。
また、手足口病の方がヘルパンギーナに比べて熱が出にくく、出ても軽い傾向にあります。
手足口病の症状
手足口病の症状は、軽度の発熱や咽頭痛で発症します。発熱は、約1/3にしかみられません。
発熱から2日間ほどあけて、手のひら、足の裏などに2-3mmの水疱(水ぶくれ)ができます。水疱は、肘、膝、おしりなどにもできることがあります。
舌や口の粘膜には水疱や口内炎ができます。
発疹は通常3-7日間で自然に改善します。
国立感染症研究所 手足口病 ※発疹の写真があります。苦手な方はご注意ください。
ヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナは、突然の発熱で発症します。熱の程度はさまざまですが、年齢が低いほど高い傾向にあり、41℃ほどまで達することもあります。高熱により、熱性けいれんをきたすこともあります。
発熱の期間は1-4日程度と言われています。
のどに水疱や口内炎ができ、ときに非常に強い痛みが出ます。
また、腹痛や嘔吐、下痢などの症状がみられることもあります。
手足口病とヘルパンギーナの違い
手足口病とヘルパンギーナの違いを以下にまとめてみました。
手足口病 | ヘルパンギーナ | |
---|---|---|
発熱 | ないか、軽度 | 高熱 |
発疹 | 手、足(肘、膝、おしりにも) | なし |
口内炎 | あり | あり |
その他の症状 | 腹痛、嘔吐下痢、爪の脱落など | 頭痛、腹痛、嘔吐下痢など |
合併症(中枢神経、心臓) | ときにみられる | まれ |
手足口病・ヘルパンギーナの合併症
手足口病、ヘルパンギーナには以下のような合併症が現れることがあります。
手足口病の合併症:中枢神経疾患(脳炎、髄膜炎、脊髄炎)、心疾患(心筋炎、心膜炎)、爪の脱落
ヘルパンギーナの合併症:熱性けいれん
手足口病にかかったあと、しばらくして爪が変形したりはがれたりすることがあります。
コクサッキーウイルスA6型に感染した際にこのような症状がみられることがあるようです。
手足口病・ヘルパンギーナの診断・検査
手足口病、ヘルパンギーナはいずれも臨床症状のみで診断が可能です。
ウイルス培養検査、PCR検査、血液検査などにより診断することもあります。しかし、実施施設が限られていることやコストも問題から、通常は行われることはありません。
重篤な合併症などがなければ、検査は必要ありません。
手足口病・ヘルパンギーナの治療
エンテロウイルスによる感染症には、特効薬はありません。
基本的には自然に治癒する疾患のため、解熱剤などを使いながら経過を見ます。
のどや口の痛みが強くて、食事や水分が摂れない場合は点滴が必要となることがあります。
手足口病・ヘルパンギーナの登園基準
学校保健安全法では、手足口病およびヘルパンギーナは、いずれも厳密な登校・登園基準が決められていません。
熱が下がっており、食事が普段通りとれていれば登校・登園は可能とされています。
発疹については、残っていても登園は可能です。
ウイルス排泄期間は上記の通り数週間に及ぶので、人に移さなくなるまで登園禁止というのは現実的ではありません。
まとめ
手足口病、ヘルパンギーナについてのまとめです。
手足口病・ヘルパンギーナ
・いずれもエンテロウイルスによる感染症
・夏かぜの代表的な疾患で、初夏から秋にかけて流行
・手足口病は発熱とのど・手足の発疹、ヘルパンギーナは発熱ののどの発疹がみられる
・潜伏期は3-6日間、発熱期間は1-4日間、発疹がよくなるまで3-7日間
・髄膜炎、脳炎、熱性けいれんなどの合併症が起こることがある
・のどの痛みが強くて食事水分が摂れないときは点滴が必要になることも
・熱が下がって食事が取れれば登園可能
役に立つサイト
教えてドクター
子育てに役立つ医療情報を発信している、教えてドクターのフライヤーです。
参考文献
- 小児内科 vol. 52 増刊号;1048-1053:2020.
- 手足口病に関するQ&A 厚生労働省
- 手足口病とは 国立感染症研究所
- 学校において予防すべき感染症の解説|学校保健ポータル
- ひふの病気 手足口病|日本臨床皮膚科医会