筆者は、2023年度の小児科専門医試験を受験しました。
その経験をふまえて、これから専門医試験を受ける方に向けて実際の流れや対策についていくつかの記事にわけて説明します。
今回は、出願までの流れと必要書類について説明します。
小児科専門医試験 受験の流れ
以下に、後期研修を開始してから専門医試験を受けるまでの時系列を提示します。
赤字で示しているのは、締め切りがある申請事項です。
ここで足切りになってしまうのはもったいないので、後述の解説と併せて漏れのないように確認しましょう。
小児科専門医試験の実施要項
まずは、専門医試験の実施要項を確認します。
必ず、受験する年度の要項を自分で確認しましょう。年度によって、提出書類の内容や形式が異なることがあるようです。
以下は、私が受験した2023年度の実施要項です。
第3回(2023年度)小児科専門医試験 日本小児科学会
第3回(2023年度)小児科専門医試験 実施要項
各書類の形式や、記載方法など、細かく指定されています。
書類の準備を始める前に、実施要項は繰り返し目を通した方がいいと思います。
特に、症例レポートの書式は非常に厳密に指定されているので、書き上げた後にもきちんと確認しましょう。
受験資格
小児科専門医試験の受験資格は以下の2点です。
(1) 受験年度の8月31日までに、会員歴が連続3年以上、または通算5年以上
(2) 初期研修修了後、小児科専門研修プログラムにより2017年度以降に研修を開始し、受験年度の8月31日までに3年以上の研修を終了、または終了見込み
このうち、1つ目が以外な落とし穴です。
小児科専門研修プログラムに参加していても、小児科学会に入るのが遅れていたり、会費の払い忘れ等で会員歴が充分でないと、受験資格を得られません。
出願に必要な書類
2023年度の、出願必要書類は以下の通りです。
(1)~(5)、(8)は学会ホームページからダウンロードします。
※自筆署名が必要な書類
(2)研修修了(見込)証明書…プログラム統括責任者の自著書名と捺印が必要
(3)症例要約指導証明書…指導医の自筆署名が必要
(9)小児科臨床研修手帳…年1回の指導医の署名と評価、研修修了時のプログラム統括責任者の署名が必要
※請求が必要な書類
(11)会員歴証明書
(13)臨床研修修了登録証
(1)受験出願書
4cm×3cmの顔写真を貼付します。この顔写真は、会場での本人確認や面接試験での資料としても使われます。
(2)研修修了(見込)証明書
以下の内容を記載します。
プログラム統括責任者は、大学であれば主任教授などにあたるかと思われます。
自筆署名が必要なので、余裕をもって依頼をしましょう。
(3)症例要約指導証明書
症例要約30症例について、それぞれに指導医の自筆署名が必要となります。
大学病院など関連施設が多く、症例ごとに別の指導医に指導を受けた場合は、それぞれの先生に署名をしていただく必要があります。
(4)症例要約・指定疾患チェックリスト
症例要約30症例の概要を1枚にまとめて書きます。
年齢の表記など、細かい指定があるので注意してください。
(1 か月児までは生後日数,1 歳児までは月数を,2 歳児までは「1 歳何か月」と表記、など)
(5)症例要約
研修中に経験した症例から、30症例の入院症例(3例まで外来症例も可)について症例要約を作成します。
以下の10の疾病分野群から、1分野につき最低2症例を選ぶ必要があります。また、各分野につき1症例は以下の指定疾患から選択しなければなりません。
10の疾病分野群
(1)遺伝,先天奇形,染色体異常
(2)栄養障害,代謝性疾患,消化器疾患
(3)先天代謝異常,内分泌疾患
(4)免疫異常,膠原病,リウマチ疾患,感染症
(5)新生児疾患
(6)呼吸器,アレルギー
(7)循環器疾患
(8)血液,腫瘍
(9)腎・泌尿器疾患,生殖器疾患
(10)神経・筋疾患,精神疾患(精神行動異常),心身症
なお、症例要約については細かく記載方法の指定があるため、必ず実施要項を熟読してから作成にあたりましょう(指定疾患の症例番号には○をつける、診断名に略語を使用しない、など)。
症例要約の作成にあたっては、以下のサイトが参考になりました。
(6)CD-R(症例要約を保存)
症例要約の提出に用いるCD-Rです。
受験者氏名でWordファイルを保存し、CD-R表面にも受験者氏名を記載します。
(7)学会が指定する医学誌への論文掲載証明
原著論文が掲載された指定雑誌の表紙と執筆者が確認できるページのコピーを提出します。
論文の掲載が決定していて未掲載の場合は、受理証明書あるいは掲載決定のメールのコピーを添付します。
(8)論文チェックリスト
学会ホームページからダウンロードできる論文チェックリストを記入して提出します。
(9)小児科臨床研修手帳
後期研修開始時に配布されます。1年ごとに自己評価及び指導医からの評価を記載します。また、指導医の自筆署名も必要になります。
Mini-CEXは年2回、360°評価は年1回の記載が必要です。
大学病院などで研修施設の異動がある場合、異動後に前の施設の指導医の先生に署名をもらいに行くのは大変なので、毎年きちんと記載することをおすすめします。
講習会は、医療安全、感染対策、医療倫理の3分野について受講し、その受講証明書を貼付します。小児科学会のホームページからアクセスできる、JPSオンラインセミナーでも可です。
明文化されてはいませんが、後期研修中の受講が必要のため、受験年の3月末までに受講する必要があるようです。
(10)受験票他受領用封筒
定型長形 3 号封筒に 94 円切手を貼付し、住所氏名を書いて同封します。
(11)会員歴証明書
受験年度の4月末日までに、学会事務局に会員歴証明書請求用紙を郵送します。
出願は5月末日までですが、会員歴証明書の請求は4月末日までなので注意が必要です。
(12)医師免許証のコピー
医師免許証のコピーです。
医師免許証は、提出を求められることが多いため、PDF化して保存しておくと便利です。
(13)臨床研修修了登録証のコピー
初期研修病院の発行する臨床研修修了証ではなく、厚生労働省から交付される書類です。
交付申請から交付までに数か月かかることもあり、早めの申請が無難です。
(14)受験料の郵便振替払込金受領証のコピー
受験料を払った控えのコピーです。
まとめ
以上、専門医試験の出願までの流れと必要書類について解説しました。
小児科専門医試験の出願は提出書類も多く、事務手続きのために受験資格を得られないこともあります。
出願の準備は、症例要約や論文の作成も含めて計画的に進めることをおすすめします。
この記事が、小児科専門医試験の受験を控えている方の参考になれば幸いです。